A Prayer For Owen Meany

大きな丸太を彫刻刀で毎日、ひとつずつ、少しずつ削ってゆく、例えて言うならそんな読書を体験することができました。

A Prayer for Owen Meany (Ballantine Reader's Circle) Book A Prayer for Owen Meany (Ballantine Reader's Circle)

著者:John Irving
販売元:Ballantine Books (P)
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 617ページ

―― 僕は神さまを信じている。Owen Meanyがいてくれたからだ。

Owenがいなければ、僕は信仰心を持つことはなかっただろう。

僕の親友、Owen Meanyは、とても、とても背が低かった。あまりに小さくて、学校のいすに座っても足が床に届かなかった。あまりに軽くて、僕らはよく教会の日曜学校の日に、Owenをパスし合うゲームをして遊んだ。女の子でさえ、軽々と彼を放り投げることができた。Owen Meanyは、この地球上の生き物とは思えない奇妙な声をしていた。その声を聞くと、誰しもがぎょっとした。

僕は父親の顔を知らない。大好きな美人の母さんと、祖母が僕の家族だ。そしてOwenは僕のかけがえのない親友だった。僕の母さんのことを、Owenは大好きだった。僕と母さんとOwenは本当の家族みたいに、よく一緒に過ごした。

Owenは野球が大好きだった。野球カードの収集家でもあった。実際にプレーするには、彼は小さく、力がなさすぎた。バットを振ることさえままならない。けれど、ある日、僕らのチームの負け試合の最終回で、監督がOwenを打席に立たせてくれたのだ。そして、Owenが人生で初めてまともにバットに当たったボールは、試合観戦に来ていた僕の母さんに命中した。僕の母さんは、死んでしまった。

Owenは、自分は神さまに選ばれた道具なのだと言っていた。自分がひどく小さく生まれついたこと、人がおびえるほど奇妙な声を持って生まれついたこと、そして僕の母さんを死なせてしまったこと、すべては意味があることなのだと言っていた。

―― 自分は神の道具なのだと信じて、自分の使命を果たそうと生きていくOwenと僕の物語。

作家について

1942年、アメリカ、ニューハンプシャーに生まれる。レスリングの選手として、大学に入学。のちにレスリングを諦め、退学。アイオワ大学で、カート・ヴォネガットに師事。「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」「サイダーハウス・ルール」など、評価の高い長大な作品を生み続けている。

こんな面白いHPを見つけましたので、紹介させていただきます♪

感想

いつも、このブログを書くときに悩んでしまうことがあります。読んでくださった方々に私の紹介した本の良いところが伝わって、手にとってみたいなあと思ってもらえるようにするには、どこまで書いたらいいのか、どんな風に書いたらいいのか…。あまり内容を書かないと本の魅力が伝わらないし、かといってあまり種明かしをしては、読む気が失せてしまうだろうし…。それぞれの本を前にしてどこまで書くか考えていると、だいたい頭の中で何となく決まってくるのですが、この作品については、うーん、本当は何も書かないのが一番いいのかもしれません。

Owenの親友である「僕」の一人称で物語は進んでゆきます。読んでいくうちに「僕」は1987年の現在、カナダのトロントにいることが分かります。そういえば、書き出しからOwenとの物語は全て過去形であることに気がつきます。

実はこの本を読んでいるうちに、私はこの作品を本当に読めているのだろうか、とものすごく自信をなくしてしまいました。教会のこと、キリスト教のこと、「キリスト降誕」の劇や、「クリスマス・キャロル」の劇、1950年代60年代のアメリカのこと、テレビの誕生、ニクソン、ケネディ、マリリン・モンロー、そしてあのベトナム戦争のこと。インターネットにずいぶん助けてもらいました。それでも、なお、調べても分からない何かが分からないままになっているような空しい気持ちが消えないときがありました。

けれど、読み終わって、感動が体中に広がったとき、何が分からなかったのか、ではなくて、これが分かったんだからいいじゃないかと、とてもさっぱりした気持ちになりました。本も人と同じように、優れているものは、どんな人の心も包みこんでくれる度量の大きさを持っているのだと思いました。

人には決して話すことのできない、わかってもらえないような、欠陥や傷や痛みを、私も誰しもが抱えています。

それを、なぜ自分だけ? 不公平だよ! ずるい!! と嘆いたり怒ったりするのも人生。

それを、意味があることなんだ、だからこそ自分なのだ、そこに使命があるのだと、前を向いて歩いてゆくのも人生。

とても奇妙で、とても滑稽で、とても悲しくて、とてもとても崇高なOwen Meanyにどうか皆さんも会いにいってみてください。

「The Cider House Rules」に続いて二冊目のジョン・アーヴィングさんの作品でした。本当に素晴らしい作家だなあと思います。同時代に生きていることに感謝したい思いです。「The Cider House Rules」について興味のある方は、難しい文学作品もどんどん原書で読破されている、憧れのリウマチばあちゃんさんの記事をご覧ください。(こちら)これまた素晴らしい作品です!

"THE COUNTRY WANTS A SAVIOR. THE COUNTRY IS A SUCKER FOR POWERFUL MEN WHO LOOK GOOD. WE THINK THEY'RE MORALISTS AND THEN THEY JUST USE US. THAT'S WHAT'S GOING TO HAPPEN TO YOU AND ME," said Owen Meany. "WE'RE GOING TO BE USED."

オウエンのために祈りを〈上〉 (新潮文庫) →こちら、和書「オーウェンのために祈りを」の上巻です。

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The known world

昔、人間を皮膚の色だけで判断する時代がありました。人が人を、家畜や日用品と同じように、売買する時代がありました。

The Known World Book The Known World

著者:Edward P. Jones
販売元:Amistad Pr
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 432ページ

黒人が、まだ奴隷として売り買いされていた、南北戦争以前のアメリカはヴァージニア州、マンチェスターを舞台にした作品である。黒人でありながら、33人の奴隷を使っていたHenry townsendが31歳の若さで死んだところから物語は始まる。

マンチェスターで最も有力な白人、Robin Williamsの奴隷であったHenryは、自分が奴隷から自由の身になると、主人であったRobinを通じて奴隷を買いはじめる。なぜ黒人の苦しみを知っているはずの同じ黒人のHenryが、奴隷を使うようになったのか、家族や周囲の人々の心情も丁寧につづりながら、作者はHenryの人生をちらちらと少しずつ明かしてゆく。

Henryのプランテーションで働く奴隷たちの人生もまた、あちこちに綴られている。

安い値で買われた頭のおかしな女の奴隷、Alice。

逃亡をはかろうとして、罰として片耳を切り落とされる男、Elias。

そのEliasと結婚する、足の不自由なCeleste。

さらに、”奴隷”以外の人間を描くことも作者は忘れていない。

奴隷から解放されて自由の身になった黒人を誘拐して、売りさばく違法業者。

それを見て見ぬふりをし、むしろそれに加担するパトローラーたち。

そのパトローラーを管理する保安官のJohnは、自身では奴隷を持ちたくないと思っていたにもかかわらず、結婚祝いとして黒人の女の子をプレゼントされる。

多くの人物が登場し、さらに多くのエピソードがちりばめられている。後ろに登場人物表が載っていて、とても役に立った。

文章の温度は低い。悲しいシーンも、惨いシーンも、淡々と進んでゆく。新聞の記事をあちこち拾い読みしているよう。しかし、そこに安易な図式は一切見えない。白人が悪者で、黒人が善良であるとか、金持ちが腹黒くて、奴隷がただかわいそうな人だとか、そんな簡単な計算式は一つも載っていない。

Henryが初めて買った第一号の奴隷、Mosesは、Henryの死後に悲しみに暮れる妻のCaldoniaに急接近する。それが、新たな悲劇に向かって、この物語を衝撃の結末へとひっぱってゆく。

いくら「法律が悪い」とか「制度のせい」と言って仕方がないとあきらめていたとしても、その法や制度に従わざるを得ない立場にいると悟っていたとしても、その理不尽さに心を痛めたり、大切な人を失って絶望したり、苦しんだり、悩んだり、闘ったりしながら、一人一人が生きていくことは、実は時代の流れをつくる、大切な力なのではないかとこの本を読んで思った。奴隷制度を廃止するという大きな流れをつくったのは、直接は政治に影響がないように見える、日常を生きてきた多くの人々の思いなのかもしれない。

毎日、楽しいものや美しいものに囲まれて、自由に表現できて、好きなものを手に入れられる現代の私たちを、歯をくいしばって支えてくれている、過去の、そして現在のたくさんの人たちの命や思いが見えるような気がした。

"Moses had thought that it was already strange world that made him a slave to a white man, but God had indeed set it twirling and twisting every which way when he put black people to owning their own kind."

作者のEdward P. Jonesは、アフリカンアメリカンであり、1951年生まれ。本作品で、ピューリッツァー賞を受賞しています。

いやーそれにしても、この本は読んでいてしんどかったです。一日に、たくさん読み進められませんでした。つまらないからではなくて、あまりに胸にひびいてしまうから。黒人の多く住む地域に住んでいるからなのか、めりめりと気持ちが沈むというか、ため息が体に溜まってくるというか…。好き嫌いという基準を大きく越えた、忘れられない本になりました。

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God Is Dead

もし、神さまが死んだら――? はちゃめちゃで、ちょっと現実離れしていて、でもなぜか確かな手ざわりのする物語です。

God Is Dead Book God Is Dead

著者:Ron, Jr. Currie
販売元:Viking Pr
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 180ページ

<神>は一人の女性に身をかえて、ダルフールをさまよっていた。「ジャンジャウィード」にさらわれて、行方が分からなくなった弟を探していたのである。アメリカの黒人の国務長官Colin Powellの力を借りて、<神>である彼女は弟の行方をつきとめようとするのだが、攻撃を受けて彼女は命を落としてしまう。<神>もまた、このとき死んでしまった。

―― <神>が死んだ。

そのことが公表されると、世界は少しずつ変化してゆく。牧師は橋の上から飛び降り自殺をする。殺し合いの末に人のいなくなったある町で、少年たちは、くじでお互いを撃ちあうペアを決め、自殺をし合うという取り決めをする。ある町では崇拝するものがなくなった大人たちが、神の代わりに子供を崇めはじめる。<神>であった女性の死骸を食べた野犬が突如しゃべれるようになる。

やがて戦争が始まる。少年は会ったこともない女の子に携帯メールを送り続ける。「アマンダ、ぼくはヘタレです。 戦争に行く勇気なんてあるわけない、自分の母親にさえ、はむかえないのに」 

少年は軍隊に入る。

世界はどんどん姿を変えてゆく。

―― <神>が死に、世界が変わり、戦争が起こる。九つの短編がつむぐ、可笑しくて怖い世界を描いた連作集。

作家について

Ron currie, Jr.は、メイン州ウォータービルで生まれ、今も在住。本作品が第一作目。

作者のホームページはこちらです。(犬がとっても好きだそうですよ♪)

感想

「God Is Dead」からはじまって「Retreat」という題名の物語まで、それぞれ異なった場所や人物(多少重なることもありますが)が出てくる短編が九つおさめられています。

永遠の命を持っているはずの<神>が死ぬ? その死骸を食べた犬がしゃべりだす?

それはいいんだけど、なぜ世界は<神>が死んだことが分かったのでしょう?

その説明は作品のなかできちんとされていて、これだけ妙な話なのに、なぜか納得して読み進められます。

一番ユニークなのは、<神>の死骸を食べたことで、言葉を話せるようになったメンバーのうち、最期の生き残りの犬へのインタビューが書かれた短編。

きっと少し笑いながら、あなたはこの本を手に取るかもしれません。けれど、その笑いはあなたの顔からすぐに消えることになるでしょう。

<神>が死んだ後、人々の殺し合いがはじまったとき、実はこんな世界が始まるまえから人を殺したかった、大学に入ったときから人殺しの衝動と戦ってきたと友達に告白する少年。

神の代用として、子供を崇めはじめた大人たちに、子供は神ではなく、子供なのだということを訴え続ける医師。

その医師にすさまじいまでの迫害を続ける町の人々。

<神>の死骸を食べてしゃべれるようになった犬の話を聞いたとたん、犬を檻に閉じ込め、その死骸を自分も食べて神になろうとした教授。

そして戦争が始まり世界が大きく変わっても、携帯のメールでしか心のうちを話せない少年。

登場人物たちはみな、どこかで出会ったことのある人たちばかりのような気がします。自分自身なのかも、とさえ思います。

世界が変わっても、人は変わらず、変えられず、変わりようもなく、相変わらず意地悪で、打算的で、優しくて、弱く、その結局ありきたりなことがどの作品でも、しっかり深く書き込まれている印象を持ちました。そして、そこにいちばん心が震えました。

作者の描いた<神>のいない世界は、近いうちにやって来るかもしれないと背筋が寒くなります。もしかしたら遠い遠い昔にこんな世界があったのかもしれないと、鳥肌が立ってきます。

いえいえ、本当はわたしたちは今、その世界に立っているのです。今、ここにいる世界のざらりとした手ざわりが、怖いくらいに伝わってくる作品でした。

"It is in our nature to destroy the weak," Evo-Psych Premier Nguyen Dung said in a statement. "Thus, we had no choice but to execute your soldiers. But we do apologize. In fact, we apologize for this entire war. Sadly, it is in our nature to fight. And we are helpless against our nature. As are you."

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A Lesson Before Dying

A Lesson Before Dying (Vintage Contemporaries) Book A Lesson Before Dying (Vintage Contemporaries)

著者:Ernest J. Gaines
販売元:Vintage Books
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 256ページ

1940年代後半のアメリカ南部の町で、一人の若者に死刑が宣告された。若者の名はJefferson。結果は目に見えていた。仲間の二人の黒人が死に、ましてや酒屋の店主である白人が死んだのだ。一人無事でいた、黒人に罰が下らないわけはない。全員が白人で揃えられた陪審員は、Jeffersonが無実を主張しているにもかかわらず、死刑を宣告した。

傍聴席にいた、育ての親であるMiss Emmaもまた、結果は始めから分かっていた。しかし、彼女はどうしても許せない一言を耳にする。「hog(豚)」。Jeffersonの弁護人は、彼が善悪の判断もつかない馬鹿なhogなので、無罪にしてやってくれ、と主張したのだった。Miss Emmaは、「私」のおばとともに、教師である「私」にこう頼みにやって来る。

あの子に、豚ではなく人間として死ぬということを教えてやってくれないか。Jeffersonが人間であることを、裁いた白人たちに証明してやってくれないか…。

「私」はそんなことやりたくなかった。だいたい教師という職業が嫌いだった。しかし、二人の強い意思に負け、いやいやながらもJeffersonを定期的に訪問することになった…。

―― 黒人差別が色濃くのこる時代の南部を舞台に、人間らしく生きることの意味、美しさをうたいあげた物語。

作家について

Ernesti J. Gainesは1933年、アメリカ南部、ルイジアナ州のプランテーションで生まれる。彼はプランテーションで働く一家の五代目であり、9歳から綿花摘みの仕事をしていた。プランテーションで働く黒人のための学校は、年間6ヶ月のみだったという。彼の作品は全て、この町がモデルになっている。その後、両親のいるカリフォルニアへ移り、スタンフォード大学の奨学金給費生として学んだ。本作品は、National Book Critics Circle Awardを受賞している。

感想

黒人差別の残る時代の南部の町、黒人では珍しく大学の教育を受け、現在は教師をしている「私」が語り手となって物語は進んでいきます。今いる町、今の職業、そしておそらく自分が黒人であることからも、逃げ出したくて仕方がない「私」。しかし、おばから死刑囚Jeffersonに豚ではなく人間として死んでゆくように教えてくれ、と頼まれます。

「私」は恋人である同僚のVivianにこう吐き出します。

What do I say to him? Do I know what a man is? Do I know a man is supposed to die? I'm still trying to find out how a man should live. Am I supposed to tell someone how to die who has never lived?

けれど物語が進むにつれて、Jeffersonとともに「私」もまた、人間として生きる美しい姿を私たちに示してくれます。

最近「エモーショナル」という言葉がキーワードになっていると聞きました。確かに、本を含めて映画やドラマ、さまざまな宣伝文句に「感動」やら「泣ける」やら「涙」という単語が目につくような気がします。

「泣ける」というドラマを終わりのほう20分だけ見て、完全に泣いてしまう私が言うのも何ですが、

泣けりゃあいいってもんじゃないぞ!!

と叫びたいのです。

例えば、失恋や片思い、別れ別れになった恋人、友情と恋愛、

それも「泣ける」かもしれない、そういう切ないのもいいけれど、

本当に私たちを大きくゆり動かすものは、その向こうにあるのだと思うのです。

何のために人は生きるのだろうとか、

死ぬってどういうことだろうとか、

どうして死ぬのが怖いのだろうとか、

それならどうやって生きればいいのだろうかとか、

真剣に口に出しても、なに難しいこと言ってんのと、笑われる時代になってしまいました。

逃げ出すことを、楽しいと呼び

見えを張ることを、プライドと呼び、

考えずに、他人を誉め

同じくらい考えずに、他人を批判する時代になってしまいました。

幸せとは何かと言われても、有名になることか、お金持ちになることか、そういう人と結婚することくらしか思いつかず、

周りから浮くのが怖くて言葉を合わせ、ただの顔見知りを友達と呼ぶ時代になってしまいました。

この本の作者Ernesti J. Gainesさんは、ただひたすらまっすぐに、真面目で難しいし笑われてしまうかもしれないことを、一生懸命みなに伝わるように、美しい物語をつくって、呼びかけてくれています。

こんなとき、私は本当に本を読んできて良かったなあと思うのです。世界のなかには確かに、本気で私たちに大きな大きな何かを伝えようと必死になってくれている人たちがいるのだと勇気づけられるのです。

小さくて、静かで、もしかしたら大半の人が気がつかないかもしれない光を、誰かがすくいとって、そしてまた誰かが見つけて…。本はそんな力を持っています。

表紙に載っている"chicago Tribune"の賛辞の言葉を紹介したいと思います。

"This majestic, moving novel is an instant classic, a book that will be read, discussed and taught beyond the rest of our lives."

大変読みやすい易しい英語で書かれています。翻訳本もあるようですが、入手が難しそう。図書館でどうぞ。一人でも多くの方に手にとっていただきたい名作。

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A Bit On The Side

ある書評を読んで、落ちてしまいました。いてもたってもいられなくて、すぐにamazon.comを検索。同じ作家の作品で、なんと$4.99のセールの本を発見! これが縁でなくて何でしょう!! というわけで、さっさと購入、さっそく読書、どっぷり世界に浸りきりました。(*゚▽゚*)

A Bit On The Side (今回画像が載せられませんでした…。参考はこちら

著者: William Trevor

出版社: Viking

ページ数: 245ページ

―― 弁護士は言った。 「遺産を拒否することもできますよ」 Graillisはホテルに戻ってから、自分は妻を亡くしたことを弁護士になぜ言わなかったのか、と考えた。もちろん弁護士は、妻のことより、彼に遺産を残した女性に興味があるのだろう。けれどGraillisはそのことを告げようと弁護士に電話をすることにした。妻帯者であるかどうかが重要であるかは分からないけれど。受話器を置くと、彼は妻と知り合ったときのことを思い浮かべた。そしてもう一人の女性のことも…。ある女性からの遺産がきっかけで、Graillisは人生を振り返り始める…。「Graillis's Legacy」

―― わたしはお父さんが帰ってくるのを待ちわびている。お父さんはエジプトに行ってばかりでたまにしか家に帰ってこないから。わたしはお母さんに話せないこともお父さんには全部話せる。よく家に遊びにくるお母さんの友達が嫌い。家で働くCharlesは、少なくともお母さんは友達を寝室には入れないから、デリカシーってもんはあるんだろう、と言う…。奇妙な両親、不思議な家族を持った女の子の一生を描いた物語。「Solitude」

他に、中年の男女の恋心と人生を描いた表題作「A Bit On The Side」など、目の前に続く道をただ歩き続けてゆく人々の人生と心を描き出した短編集。

作家について

William Trevorは1928年、アイルランドのCounty Cork、Mitchelstownで生まれる。DublinにあるTrinity Collegeを含むいくつかの大学で学んだ後、彫刻家、コピーライターを経て小説家となる。KBEの称号を持つ。ブッカー賞にも幾度もノミネートされており、数々の文学賞を受賞している。短編の名手と呼ばれ、2007年O.Henry Prizeも受賞。現在、England、Devonに在住。

感想

きっかけは、詩人であり小説もお書きになっている小池 昌代さんの書評でした。

容赦がないのに、どこか一箇所(かしょ)、絶望を裏返す温かみのある作品で、一読、しびれた記憶がある。

という文章に私のほうが、一読、しびれてしまいました。 どんな小説なんだろう、読んでみたいなあ、とわくわく。

トレヴァーの作品には、こうしてリアリティを積み重ねた地上から、不意に離陸する瞬間がある。その聖なる一瞬に作品の命がある。高みから見下ろす著者の視線は、非情さをもって真実を照らし出すが、そのとき読者には涙でなく、より深い、沈黙の慟哭(どうこく)がわきあがるのだ。

不意に離陸する瞬間」て? その一瞬を味わいたい!! 何はさておき、これはもう読むしかない、というわけで手にとったのがこちらの本です。

単細胞の私は、書評の「瞬間」という言葉に、最後の最後に大どんでんがえしが待っている、ひねりの訊いた物語を想像していました。

けれども違う、違うのです。 

変な言い方かもしれませんが、トレヴァーさんの書いた作品には、彼が登場人物をコントロールしている気配を感じません。彼は登場人物のそばに寄り添っているだけのような気がします。

私たちは(いえ、特に私は)、例えば家族や友達、恋人が、苦しんでいたり、不安のなかにいると「大丈夫だよ」と声をかけます。

けれど「大丈夫だよ」と言った優しいつもりの自分の心をよーく覘いてみると、相手が親しい人であればあるほど、自分自身が相手の苦しさや不安にとりこまれてゆくのがいやで、そんな自分の気持ちを早く消したくて声をかけているのに気づくことがあります。

結局、「大丈夫だよ」をむやみやたらに口に出して、自分の不安を消そうと自分のためだけに声をかけている時があります。相手の歩幅に合わせることができず、待っていることができず、だから合わせてくれたり、待っていてくれていた人の存在を思うこともできなくなるのです。

こんなとき、出てくる言葉をぐっとおしころして、ただ黙って見つめているのがトレヴァーさんのような気がします。

相手の抱えている問題と自分のできることを、きちんと切り離して見ることのできる冷静さと、

人間は誰でも自らで生きていく力があるという圧倒的な信頼が、トレヴァーさんにはあるように思います。

そしてそれは「大丈夫だよ」を連発するより、よっぽど相手のためになる真の優しさであることを、彼の作品は教えてくれます。

だから、幸せだとか不幸だとかに分けられずに物語は終わってゆきます。なぜかといえば、それこそが人間なのであり、生きていくことだから。そのあまりにも「真実」な何かをつきつけられるとき、読み手のなかに「不意に離陸する瞬間」がやってくるのだと感じました。

小池昌代さんは書評の最後にこう綴っています。

この作家は、そうした運命の只中(ただなか)にいる人々を、決してすくい上げず、ただ見つめる。あまりに強く見つめるので、私にはそれが「愛」のように見える。

この作品の舞台には、アイルランドの地方の町が多く出てきたように思います。アイルランドの歴史や今のアイルランドの立ち位置をもっと分かっていたら、もっと色々なことを読みとれたかもしれないなあ、と思いました。

最後に言い忘れてならないことは、すばらしい作家と出会えるチャンスをくださった小池昌代さんの文章のこと。残念ながら未読なのですが、日本に帰ったら、彼女の詩集や小説を読んでみたいなあと思いました(*^^*)。

In my foolishness I did not know what I since have learnt: that the truth, even when it glorifies the human spirit, is hard to peddle if there is something terrible to tell as well. Dark nourishes light's triumphant blaze, but who should want to know? (「Solitude」から引用)

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Unless

「Unless―― もし~でなかったら…」 人生でそんな風に思うことありませんでしたか。

Unless (Fourth Estate) Book Unless (Fourth Estate)

著者:Carol Shields
販売元:Fourth Estate
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 320ページ

地元の図書館では皆、私が誰かを知っている。誰もじろじろ見たりはしないけれど。私の名前が「Rita Winters」で、夫は医者で、トロントに近いオンタリオ州のこの町で、古くて大きな一軒家に住み、三人の娘がいて、作家であり翻訳者であることを、皆が知っている。

そして、一番上の娘「Norah」がかわいそうな状況にあること、―― 19歳の聡明で美しい彼女が、一緒に住んでいる恋人と別れ、突然大学を退学し、行方が分からなくなったと思ったら、トロントの街角であぐらをかいて座り、「Goodness(善)」と書いたボール紙をぶらさげ、コインをもらうための器を前に置き、物乞いをはじめたこと ―― を誰もが知っている。

私の日常はそれでも動いてゆく。翻訳をし、二番目の小説に着手し、友人と喫茶店でおしゃべりをし、夫と他の二人の娘との生活は続いてゆく。文句のつけどころのない、充実した幸せな生活。しかし、Norahのことが頭から離れることはない。

―― なぜ、娘は急にあんな物乞いみたいなことをはじめたのか。「Goodness」って一体どういう意味なのだろう。44歳の母であり作家であり、女であるRitaが「Goodness」とは何か、人生とは何かを探し求める物語。

作家について

1935-2003 アメリカ、イリノイ州で生まれる。1957年結婚後、カナダに移住。詩や短編を本格的に書きはじめる。1975年Ottawa大学の英文学MAを取得。娘四人と息子一人を育てる。1993年に出版された「The Stone Diaries」でピューリッツアー賞を受賞した。(詳しくはこちら

感想

この本は面白かったのですが、それを書き表すのが難しくて、さっきから書いたり消したりしています。だいたい、あらすじもあってないようなものなのです。

ある章では、友人と喫茶店に行っておしゃべりします。ある章では、Ritaが書き始めた小説の登場人物が出てきます。ある章では、奥さんに出て行かれた古くからの友人が、ある章では…。

いえいえ、面白いのはそんなところではないのです。

全編を通して、Ritaが何をしていても、どんなことを考えていても、その奥底には「Norah」がいます。「Goodness」という言葉が横たわっています。そして、悲しいことに物語が進んでも母親とNorahとの距離が縮まっていく気配はありません。

印象的なシーンの一つに、Ritaが仲間と行ったレストランのトイレで落書きをするというシーンがあります。

"My heart is broken."

作家であり翻訳家である彼女が、この言葉をトイレで人知れず、落書きします。そしてはじめて自分がとても解放された気持ちになります。このちょっと笑っちゃうところまでいく、やりきれなさ。Ritaが負っている傷の深さを示された気がしました。

そう、この小説は、RitaもNorahも傷ついているのに、それが笑っちゃうくらいからっと書かれています。

Norahが最後に家で、Ritaである私と交わした会話。

"Try to explain." I said.

"I can't love anyone enough."

"Why not?"

"I love the world more." She was sobbing now.

"What do you mean, the world?"

"All of it. Existence."

"You mean," I said , knowing this would be sound stupid,

"like mountains and oceans and trees and things?"

「私は完全にどうしたらいいか分からないんだわ。寂しいんだわ。傷ついているんだわ」という自覚をもって、自分自身を眺めている妙な冷静さが、変におかしくて、それがやりきれなくて胸を打ちます。

自然に流れていくように思われる章だてですが、トイレの落書きのシーンのように、個別の出来事が、やがて心に一つ一つ石を積み上げてゆくようにだんだんと重たくなり、じわじわと効いてきます。ただ、それがもしかしたら、あらかじめ用意されているというような印象、もっと言えば少しわざとらしいという印象を持つ方がいるかもしれません。

終わりのほうで、Norahの心の傷が明かされるところ(ここは私は好きです)を含めて、でもやっぱりどのシーンもこの物語に必要なのだなあ、と私は思いました。こういうときは、私は喜んで作者のわなに自分からひっかかっていきたいと思います!

事態は一見どんどん悪くなっていくようで、けれどほんとのほんとは、良いほうに向かっていくプロセスの一つでしかないこと、人生ではいっぱいあるのかもしれませんね。(*^-^*)

そういうわけでピューリッツアー賞を受賞したという「ストーン・ダイアリー」もいつか読むだろうなあと感じています。翻訳書が出ているようですね。うん、そっちを読もうかなあ。

"A life is full of isolated events, but these events, if they are to form a coherent narrative, require odd pieces of language to cement them together, little chips of grammar (mostly adverbs or prepositions) that are hard to define, since they are abstractions of location or relative position, words like therefore, else, other, thereof, ... .... "

ところで(。・o・。)ノ

このブログの洋書のジャンル、気がついたらものすごーくおおざっぱですよね…。本当に怖いくらい雑な区分けで申し訳ないのですが、ミステリ(ー)以外の大人向けの本は「文学」に入ってしまっているとお考えください。あと「YA(10代向け)」って、9歳からの本も入ってるんですけどーなんてどうか言わないでくださいね。大人向けじゃない向けの本が入っているとお考えください。Σ( ̄ロ ̄lll) ひどい、ひどすぎる。流行りの(もう終わったかも)「片付けられない女」みたいだわ。

あんまりジャンルを気にして読んでいないのです。(言い訳)面白そう!と思った本を読んでいるだけなのです。(更に言い訳)あー、もう「洋書」ってことで、ひとまとめにしちゃおうかなあ。(開き直り)

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A Place of Greater Safety

この物語の旅がとうとう終わってしまいました。読み終わりたいのに、いつまでもページをめくっていたいような、そんな気持ちで読書を続けてきました。

A Place of Greater Safety Book A Place of Greater Safety

著者:Hilary Mantel
販売元:Picador USA
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 749ページ

Robespierreは、横たわる母の顔を見て、母親が死んでゆくことが分かった。「母さんはもうすぐ棺に入るの。そして埋められるのよ」彼は母が声に出さずにそう言ったのが分かった。Robespierreが6歳のときだった。

母親が亡くなったあと、父親は家を出て戻らなくなった。子育てを放棄したのだ。祖父とおばが面倒をみてくれることになった。これ以後、Robespierreが人生のなかで両親について述べることは二度となかった。

すぐれた学才のあったRobespierreは、やがてルイ大王学院(Louis-Le-Grand)に通うこととなり、そこでCamilleと出会う。二つ下でわずか10歳の彼は、とても美しい少年だった。彼の吃音はRobespierreを落ち着かなくさせたけれど、誰にも心を開いてこなかった彼にとってCamilleは唯一の友達となった。

Camilleは学校を卒業すると、パリで弁護士として働くこととなる。同じ年頃の弁護士のなかに、めきめきと頭角をあらわしたやり手の男がいた。頬から唇にかけて醜い傷を持つ彼の名はDanton。

―― 1789年、フランス、パリ。

仕事をし、金を稼ぎ、はやく結婚をして家庭を持ちたいと考えていたDantonは、しかしCamilleを介して少しずつ革命の波へとのみこまれてゆく。多くの人望を集めた彼は、その力のある声を武器に革命を動かしてゆくことになる。

新しい時代への原動力となる多くの人たちをつなぎあわせたCamilleは、一方で人妻に恋をし、その気持ちは執着へと変わり、彼女の娘と結婚することを考え始める。

人との争いを好まず、人を傷つけるのも自分が傷つくのも恐れ、毎日をやりすごすのに疲れきっていたRobespierreは、多くの飢えた人々を救うために、革命に命をかける決心をする。

―― 果たしてフランスに革命は起こせるのか。彼らはフランスを「A Place of Greater Safety」に変えられるのか。フランス革命の時代を生きた三人の男たちの物語。

作家について

イギリス、Glossopで生まれる。CBE(大英帝国勲章)の称号を持つ。ソーシャルワーカーとして、ボツワナで5年間、サウジアラビアで4年間を過ごす。その経験を題材にして書かれた作品もある。(*彼女の書斎の写真を見つけました♪→こちら

感想

物語の主人公、マクシミリアン・ロベスピエール、カミーユ・デムーラン、ジョルジュ・ダントンは実在の人物です。三人は盟友同士であったことも知られています。

前半は彼らの子供時代が語られています。ほとんど事実が知られていないというこの時代の三人を、作者はおそらく綿密な調査をし、周到かつ自由な想像力でつくりあげています。そして人格が形成されるにいたるその芽を見過ごすことがなく拾いあげて書いているように感じました。

中盤、彼らがパリに集まるころから、私のページをめくる手が更にスローになっていきます。あちこちで繰り広げられる政治的な交渉、策略、行動をつかむのにじっくり時間をとりました。実在の人物がどんどん登場します。革命擁護派の貴族「ルイ・フィリップ二世」、革命の獅子「オノーレ・ミラボー」、ジロンド派「ジャック・ピエール・ブリッソー」、その派閥の女王「ロラン夫人」、人民の友と呼ばれた「ジャン=ポール・マラー」。インターネットで調べているうちに、そちらのほうに夢中になってしまうほど魅力的な人物たちが登場します。

また、三人の男たちの女性関係も大変おもしろい。Cammileと大恋愛の末に結ばれたとされるリュシル・デュプレシについて、歴史的に知られている事実と全く異なった捉え方で物語をおこしています。全体的に女性の描き方がとっても魅力的で、おもしろい、おもしろい。(とおもしろいを連発するほどおもしろいです。)

ここを乗り切ると、後半からはもうこの本にどっぷりはまりこみます。歴史上の事実として知られているラストも、やはり読むに値する、すばらしいドラマが用意されています。

注目すべきは語り口。多くの人たちが登場し、ときには一人称で語りだします。これだけ多くの人たちが、入れ代わり立ち代り現れるのに、その声に独自の色がありリズムがあり、はっきり書き分けられているところはすごいなあと思いました。

「自由・平等・博愛」をうたったフランス革命。同時にこの時代は、ギロチンとよばれる断頭台が多くの人々の命を奪った、暗黒の時代であったことでも知られています。そして世の中を少しでも良くしようと立ち上がった三人の主人公のうちの一人は、テロの語源となった”Terreur”恐怖政治の時代をつくったことでも知られています。

とつぜん話は変わりますが、世の中って、どうやら光(らしきもの)と闇(らしきもの)に分けられているように思います。

たとえば

成功者と敗残者、健康と病気、金持ちと貧乏、出世とリストラ、美と醜、もてる男とそうでない男、若い女とそうでない女、強気な人と弱気な人、おしゃれな人といけてない人、恋人のいる人といない人、友達の多い人とそうでない人…

闇がなくては光が分からない、と以前に書いた覚えがありますが、それでは闇は光を輝かせるためだけに在るのでしょうか。だいたい光だと思いこんでいるものも闇だと思いこんでいるものも、本当にそのものなのでしょうか。光と闇が逆転するとき、価値観が大きくゆらぐとき、光を輝かせている「闇」をもっと別の捉え方でつかめるかもしれない。

ブログを始めてから、繰り返し同じことを書いています。これが私の読書の(もしかして人生の?)大きなテーマなのかもしれません。私は、光らしきものと闇らしきものが一体何なのか、価値観がぐらぐらと揺らぐとき、そのときの人間というものにすごく興味があることを、この本は気づかせてくれたように思います。目指す場所がどんどんはっきりしてきました! ありがとう、Hilary Mantelさん!ヽ(^◇^*)/

この本は少々長いですが、世界史にまったく疎い私でものめりこめました。私は調べながら読みましたが、特に知識がない状態であっても十分楽しめると思います。ただ欲を言えば、ロベスピエールの人物像を中盤、もう少し掘り下げて書いてほしかったです。ごめんなさい、人間て欲望のかたまりなんです…。

Maximilien Robespierre, 1793: "History is fiction."

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Water for Elephants

去年の話題作のうちの一冊に挑戦!(*゚▽゚*) 「BookSense.com」で、Book of the Year に選ばれました。

Water for Elephants Book Water for Elephants

著者:Sara Gruen
販売元:Algonquin Books
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 331ページ

作品区分: 文学

―― 私は90歳である。もしくは93歳。そのどちらかだ。移動は車椅子。施設での生活。ときどき、子供や孫たちが会いにくる。ある日、近くにサーカス団がやって来た。入所したての新入りが言う。「昔、象に水をやったものだよ」 あんたは嘘つきだ! 象がどれくらい水を飲むか知っているのか? 

七年近くサーカスで働いていたことを、私はあまり人に話さない。口がすべりそうで怖いからだ。七十年間、私はあの「秘密」を誰にも話さず自分の心にしまいつづけてきた。

―― 23歳の私「Jacob Jankowski」は、名門大学に通い、父親にならい獣医学を学ぶ幸せな青年だった。しかし、とつぜん状況は一変する。両親が事故で死亡。そして借金をしていたことが判明する。無一文の孤児となった私はある夜、汽車に飛び乗った。それは「Uncle Al」率いるサーカス団の列車だった。獣医学を学んでいた私は、サーカス団の動物の獣医として働くこととなり、動物と曲芸をする美しい女性「Marlena」と出会う。動物たちを管理する責任者の「August」は彼女の夫。気性が激しく、ころころ態度の変わるAugustに私はだんだん嫌悪をつのらせていく。

ある日、サーカス団に象「Rosie」がやってきた。Rosieは人の指示が理解できず、曲芸ができず、サーカス団にいた経験もない売れ残りの象だという。でもRosieは、本当に人の気持ちが理解できない象なのだろうか…。

―― サーカス団で待っていた私の人生とは? 誰にも話していない「秘密」とは?

作家について

Sara Gruenはカナダで生まれる。現在アメリカ、イリノイ州に在住。本作品が三作目の長編小説。

作家のHPはこちら

感想

この作品の魅力は、何といってもまず舞台が「サーカス」だということ。列車で国内をまわるサーカス団、目的地につき大きなテントを設営する様子、呼び込みの大きな声、それを聞いて集まる人々の熱気や興奮、サーカスに出る檻のなかの動物たちのにおい、読んでいるうちに目の前に世界が立ち上がってきます。さらにサーカスですから、登場人物たちがミステリアスで個性的でないわけがありません。けれどあまりにも現実離れした人間をえがかずに、そこに普通の人々が持つ生活、悩みがうまく取り入れられているように思いました。

それから物語の展開がはやくて、ドラマティックだということ。「90歳余りの現在の私」と「若き日のサーカス団での私」が入れかわり立ちかわりあらわれます。「私」の老人施設での周りの人とのやりとりも、サーカス団で身にふりかかる出来事も、どちらも流れがはやく、アップダウンも効果的につくられていて、波にのるとページをめくる手が止まらなくなってしまいます。人の気持ちや心がじっくり書かれた小説も好きなのですが、こういうぐんぐんストーリーに乗れてしまうような小説もやっぱり良いですね!

名門大学の学生が、両親を失くし、無一文になり、学校に通えなくなり、サーカス団で暮らしをたて、しかも「世界大恐慌」が起こった時代で生活は楽ではなく、90歳余りになった今、施設で生活しています。車椅子で移動し、子供や孫たちが定期的に会いにきますが、家族の一員になれていない寂しさを感じています。今の世の中の価値観では、もしかしたら主人公を「不幸せ」だと考える人が多いかもしれません。けれど私はこの本を読んで、彼のことをどうしても「不幸」だと思えませんでした。この作品では、出てくるものたちが皆、思うぞんぶん怒ったり、嫉妬したり、ねたんだり、欲にふりまわされたり、泣いたり、笑ったり、喜んだり、愛したりしています。

「幸せ」って一体どんなことをいうのだろう。

そんな問いかけを感じる作品でした。

I don't talk much about those days. Never did. I don't know why-- I worked on circuses for nearly seven years, and if that isn't fodder for conversation, I don't know what is.

Actually I do know why: I never trusted myself. I was afraid I'd let it slip.

この作品は「BookSense.com」でBook of the Yearに選ばれています。「amazon」をはじめとするネット書店や大型チェーン店が圧倒的な勢力を誇っているなか、それに負けじと独立系の本屋さんが手を組んで運営しているサイトが「BookSense.com」です。売れ筋の本ばかりでなく、ユニークな作品もピックアップされていて、私はいつも見るのを楽しみにしています。最初のページの「本を読む人」が、おばあちゃんになったり、女の子になったり…。見るたびに変わって、かわいいんですよ!

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Wise Blood

遅々として進まない「聖書」を前に(詳しくはこちら)むくむくと沸いてくる疑問(´-ω-`)

「聖書」の何が多くの人をひきつけるのでしょうか。たくさんの人が、どんなきっかけで、この本を携えて生きていこうと決めたのでしょうか。この本と共に人生を歩んでいる人は、私とどんな風に違うのでしょう。人生を捉える彼らのまなざしは私の視点と、何が違うのでしょうか。

そんな疑問を持ちながら、インターネットで検索していたら、この本に出会いました。

Wise Blood Book Wise Blood

著者:Flannery O'Connor
販売元:Farrar Straus & Giroux
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 232ページ

作品区分: 文学

Hazel Motesは故郷をあとにして「今までやったことのない新しい何かをする」ために汽車にゆられていた。

Motesが18歳のとき軍隊に召集された。彼の父親も祖父も「牧師」だったから、Motesも「牧師」になりたかったし、自分のsoulを政府や戦地に売り飛ばすつもりなどなかった。彼はたった一冊の本「聖書」だけを持って戦地に赴いた。戦地で彼は傷を負い、その傷が癒えぬ前に次の戦地へ送られた。soulなど存在しないことがだんだん分かってきた。「聖書」を読んだけれど、それは「Jesus」とは関係なくて、ただ家を思い出させてくれるからだけだと気がついた。

兵役が終わって、家に戻ってみると、そこには荒れた空き家があるだけだった。何もないし、誰もいなかった。Motesは「Jesus」を捨てることに決めた。

新しい町でMotesは、目の見えない牧師「Hawk」とその娘「Lily」に会う。「Jesusなんていない」と主張するMotesに、Hawkは宣教用のビラを渡し、これを道行く人に配りながら自分の懺悔を人々に告白するように促す。

「Jesusは君を愛しているよ」Hawkにそう言われて、かっとなったMotesはみなに演説をする。「私はキリストのいない教会を設立します!」

一方、自分には「Wise Blood」が流れていると信じている若者「Enoch Emery」は、Motesと出会って確信していた。目的は分からないし、根拠もないが、Wise BloodはMotesこそが、長い間自分が待ち望んできた人物であると告げたからだ。

―― 果たして、Motesは「Jesus」から自由になれるのか。 Emeryの「wise blood」は彼にどんな人生を歩ませるのか。 「Jesus」を信じてきた男が「Jesus」を捨てようともがく、おかしくも悲しい物語。

作家について

フラナリー・オコナーは、1925年にアメリカジョージア州で生まれる。彼女が16歳のとき「紅斑性狼瘡」という難病で父親を失い、自身も同じ病により39歳で亡くなる。カトリック教信者であり、発病後もアメリカ国内を回り活動を行った。二つの長編小説と数々の短編を残し、その作品は,「southern gothic」のジャンルに属すると評されている。アメリカでは今もなお評価の高い作家の一人である。

→ 詳しくはこちらのHPで

感想

冒頭の「Author's Note」で作家自身はこの作品を「Comic novel」だとしています。けれど、この小説にこめられたユーモアは、ドジな主人公が大失敗をして、思わずふきだしてしまった、という類のものではありません。

残酷な行為を感情的に語り、怒りを激しい言葉で吐き出し、悲しみを涙でつづるより、それを「笑い」に変えたほうが、人により伝わるときがあります。「笑い」は、物事を少しつきはなして客観的にとらえることだからです。そんなユーモアで語られるこの作品もまた、登場人物の人生が悲惨なほど滑稽で、滑稽なほど悲しみが胸をうちます。

その特徴を表すかのように、物語は三人称で進みます。一人称に比べて、ぐっと視点が遠ざかります。少し上から眺めて記されるこの物語は、だからこそ、人の営みの愚かさと素晴らしさをより強く心に届けられているように思います。

これは「Jesus」を望み、信じてきた男が「Jesus」を捨て、自由になりたいともがく物語です。

しかしこのJesusが入っている「カギ括弧」のなかには、どんな言葉もあてはまることに気づかされます。

ある人にとってはそれは「お金」であるかもしれないし、

「恋愛」であったり「名誉」であったりするかもしれません。

「ある人から言われた言葉」や、

「ある人の顔」が浮かぶ人もいるかもしれません。

何かを強く望むことと、何かを強く否定することは、同じなのかもしれませんね。

作者は人間というものが、そのもがきの中で光を見出せると心の底では信じているように私は思いました。もちろん明るさに満ちた作品とは言えません。

けれど、真昼より闇夜のほうがろうそくの炎が明るく見えるように、救いのない暴力やヘドロのような悪意を描くことで、その奥でゆらめく小さな光をより輝かせたかったのかもしれないなあと感じました。

翻訳書はこちら→ 賢い血

フラナリー・オコナーは発病した後に、本格的に小説を書き始めました。二つの長編小説と数々の短編を残し、アメリカでは現在もなお評価の高い作家の一人です。彼女は発病後、農園の一軒家で暮らしていました。宗教活動等でアメリカ国内には多少出かけましたが、ほとんどの日々をこの家で過ごしました。発病から亡くなるまでの13年間、親しく会話をする人間は母親一人だったそうです。

世界中を旅していなくても、数え切れないほどの多くの友達がいなくても、人は心のなかに深遠な美しい宇宙を持つことができることを証明してくれたように思います。

最後に一言だけ。彼女の母親「Regina Cline O'Connor」は99歳で1997年に亡くなりました。夫を看取り、娘を看取り、99年間を生き切った彼女の心にもまた、光に満ちた静かな風景が広がっていたことを、私は信じたいと思います。

"I'm sick!"he called. "I can't be closed up in this thing. Get me out!"  the porter stood watching him and didn't move.

"Jesus," Haze said, "Jesus."

the porter didn't move. "Jesus been a long time gone," he said in a sour triumphant voice.

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The Book of Illusions

久しぶりの読書、ページをめくる喜びをひしひしと感じています。今年一冊目の洋書はこちら。

The Book of Illusions: A Novel Book The Book of Illusions: A Novel

著者:Paul Auster
販売元:Picador USA
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 321ページ

作品区分: 文学

「何ヶ月ぶりだろう」冬の初め、Davidは久しぶりに自分が笑ったのに気がついた。

今年の六月、ちょうど10年目の結婚記念日の一週間前に、Davidは妻と二人の息子を飛行機事故で失った。深い悲しみから立ち直れず、酒を飲むか、テレビを見るか、家をただ歩き回って、時をやり過ごしていた。

いつものように、眠れない夜を酒でごまかしながら、テレビのチャンネルを切り替えていると、ふと一つの無声映画が目に止まった。そして、Hector Manという男が主演しているその映画にDavidは久しぶりに声を出して笑ったのだ。

Hector Manは死んだ、と誰もが思っていた。彼は12の映画を残し、ある日突然姿を消した。痕跡はなく、手がかりは得られず、その日をさかいに、彼の姿はこの世から忽然と消えてしまった。Hector Manの映画が気に入ったDavidは、彼の映画についての本を書くことにする。本当の理由は、家族を失った深い悲しみを忘れる他の何かに集中したかったからだった。

本が出版された後、Davidのもとに奇妙な手紙が届く。「Hector Manがあなたに会いたがっている」という彼の夫人からのものだった。Davidはこの手紙が本当かどうか疑わしいこともあり、本気でとりあわなかった。しかし、ある雨の夜、ひとりの女性がDavidの家にやってくる。左の頬に大きなあざのある彼女の名前はAlma。Almaは「私と一緒にHectorに会いにいってほしい」と言う。彼女と一緒に向かった飛行機のなかで、AlmaはDavidにHector Manの謎について語りはじめる。

―― Hectorは本当に生きているのか、いったいなぜDavidに会いたがっているのか。DavidはHectorをめぐる物語に少しずつ巻き込まれてゆく…

作家について

ポール・オースターはニュージャージーで生まれた。「ニューヨーク三部作」(シティ・オブ・グラス、幽霊たち、鍵のかかった部屋)が高く評価される。映画にも興味を持ち、いくつかの脚本も手がけている。本作品は彼の10作目。妻で作家のシリ・ハストヴェットとともに、ブルックリンに在住。

感想

ポール・オースターをご存知の方は多いのではないでしょうか。数々の素晴らしい英米小説をおくりこんでいる、名翻訳家の柴田 元幸さんが彼の作品を訳していらっしゃることもあって、日本でも人気があるようです。そして、言わずもがな、この作品も素晴らしいものでした。特に最後の100ページは圧巻。これを読むために今までの物語があったのだと、ため息が出ます。

家族を失い、悲しみにくれるDavidの一人称で物語は進んでゆきます。決して明るくないトーンで一定のリズムを刻むように、文章が流れてゆきます。声高に何かを主張するような物語ではないにもかかわらず、強くゆさぶられるものが行間に隠れているのを感じます。

死んだように生きていたDavid、酒におぼれ、人と会わず、家に閉じこもって、この世から姿を消したHectorの本を書き続けます。それも、悲しみを忘れるために他の何かに集中したくて、目の前の時間を一秒でも埋めていくために…

Once you were on the other side of one of those holes, you were free of your self, free of your life, free of your death, free of everything that belonged to you.

Davidの言葉から引用しました。

彼はしかし、結局この世界に踏みとどまることになります。

お酒でまぎらわさなければ、夜を越えられない日々。ふと何かの拍子に失った人を鮮明に思い出してしまって、涙が止まらなくなる日々。

しかし声を殺して泣く夜は、生きていなければ体験できません。

そして大切な人を思い出すことも、生きていなければできないのです。

やがて、錆びついた大きな鉄の滑車が鈍い音をたてて少しずつ少しずつ回り始めるように、Davidの人生もゆっくりと動きはじめます。

生きてゆくこと、生き続けてゆくことの、何と奥深く、奇跡に満ちたことなのでしょう。大切な何かを失くしながら、重たい荷物をひきずりながら、たまには互いに励ましあって、とにかく生き続けていきたいと、そう言える自分でいたいと思わされる作品でした。

最後に、この本の存在を教えてくれた友人に感謝したいと思います。

さて、

先日、英語と日本語のエクスチェンジをする機会がありました。私の相手は韓国人で大学生の女の子。母国語であるハングルはもちろん、高校のときにアメリカに留学して英語はペラペラ。さらに日本語も「今は敬語を習っています」とのことで、なかなかのもの。しかも、彼女の専攻は二つあって(double majorというのだそうで)「経済」と「音楽」(ピアノ)だそうです。

まさに、天は二物を「与えてしまった」と言うべき、才能豊かな女の子でした。こういう人に会うと何だか大きなエネルギーをもらうようで、とても嬉しいですね。私も少しはあやかりたいものです。ヽ(*゜∀゜*)ノ

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