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告白の欲望

”告白の欲望はともすれば直ちに製作衝動と間違えられる。
もとより体験の告白を地盤としない製作は無意義であるが、しかし告白は直ちに製作ではない。
告白として露骨であることが製作の高い価値を定めると思ってはいけない。
けれどもまた告白が不純である所には芸術の真実は栄えない。
私の苦しむのは真に嘘をまじえない告白の困難である。
この困難に打ち克った時には人はかなり鋭い心理家になっているだろう。
今の私はなお自欺と自己弁護との痕跡を、十分消し去ることができない。
自己弁護はともすれば浮誇にさえも流れる。それゆえ私は苦しむ。真実を愛するがゆえに私は苦しむ。”

告白の欲望。
和辻哲郎のこの文章に出会ったときから、私の頭から消えない”告白の欲望”。

言葉を手にしたからには、誰かに知ってほしい、聞いてほしい、見てほしい。
どんなに孤独であっても、それが自分のための日記であっても、言葉を発すればそれは誰かへの告白なのだと思う。
それなら自慢や自己弁護のない純粋な告白はあるのか。

”私が苦しむのは真に嘘をまじえない告白の困難である。”
”今の私は自欺と自己弁護との痕跡を、十分消し去ることができない。”

”真実を愛するがゆえに私は苦しむ”

真実なんてどこかへ吹き飛ばし、私の、自分の、この気持ちを届けたいなどと
確信犯の物言いをしているうちは、苦しみからは程遠い。
むしろ、ぺらぺらのカタルシスに満足した一人相撲の横綱は、
穴に落ちたことも気づかずに勝った気でいるのだ。
知らないことを自覚していない人間の、その恐ろしさ。


私は苦しめているだろうか。


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青空文庫にも、入っています。

snow snow snow
人生のなかで、ほとんど初めてと言っていいくらい、本を読むことから遠ざかっていました。
時間がなかったというより、そういうことに心が向いていかなかったからです。
本を読むことには気力と体力がいるというあまりにも基本的なことを思い知りました。

スカイダイビングや陶芸などと比べると、読書は気軽な趣味に入るかもしれないけれど、
好きな読書をこつこつ続けられる体と心をつくっていきたいと思っています。
でも、具体的にはどんなことしていけばいいのか…。
たましいの器である体も、たましいに繋がる精神も、鍛えていかなければいけないなあと思っています。

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