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引き受ける

ほとんど動物的な衝動で『絵本』を読みたいと思った。後づけでいくらでも理由はひねり出せるけれど(妊婦だからとか)、あれこれの理屈は置いておいて、体が求めているというのが一番しっくりした理由である。

子供のころ絵本を穴があくほど見つめていた(読んでいたというより)ときの、わくわくした気持ちを思い出した。活字は多いほど良いと思っていた私の変化。こういう自分も面白いなあと思う。

ルピナスさん―小さなおばあさんのお話 Book ルピナスさん―小さなおばあさんのお話

著者:バーバラ クーニー
販売元:ほるぷ出版
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表紙の絵にまず吸い込まれる。海の青、丘の若草色、丘の上に一人立つルピナスさん。

温かく優しい色使い、ルピナスさんの顔をすっと上げた立ち姿、同時にそれらとは相反したある気配がそこにはきちんと塗り込められているのを感じる。言葉にすればそれは、寂しさとか辛さとか苦労とか、そうやって表現されるものなのかもしれない。バーバラ・クーニーの絵には、言葉という表現で区切られて取りこぼされてしまった、あいまいな『気配』というものがきちんと描かれているように思う。

このお話は、ルピナスさんと呼ばれる小さなおばあさんの、アリスと呼ばれる少女時代からルピナスおばあさんになるまでの一生の物語である。子供のころにおじいさんと結んだある約束を、ルピナスさんは自分がおばあさんになってから果たすのだけれど、私としてはルピナスさんは一生をかけてどの局面においてもその約束を果たしていたのじゃないかなあと思う。

ルピナスさんの一生のうち、年をとってからの絵のほうが私はだんぜん好きだ。そこには何かきっぱりとした潔さが感じられる。

最後のページ。生き生きと動いている子供たちのずっと奥の丘の上に、ルピナスさんの小さな小さな影が見える。薄いオレンジと桃色が溶けだす夕闇の空気のなかにルピナスさんが一人で立っている。

”幸せ”と呼ぶものに付随する全てを引き受けるということ。

人生とはそういうものなのではないだろうか。

ルピナスさんは、私のあこがれの女性である。

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コメント

こんばんは。
「ルピナスさん」、今は大学生の息子が小さいときなぜか気に入って繰り返し読んだ絵本です。懐かしい。怪獣や忍者も大好きだったので、これだけ異質でした。不思議です。けっこう大人向けですよね?今思うと私の読み聞かせに力がはいっていたのかも・・・
さて、妊娠中、読みたいものを読み、食べたいものを食べて、のんびり、ゆっくりお過ごしくださいね。

点子さん
「ルピナスさん」、息子さんのお気に入りだったんですね。大人っぽい感性も持ち合わせているお子さんなのでしょうね!
どんどん大きくなるお腹をさすりながら、周りに甘えて嫌なことを避けながら、ノンストレスの毎日を送っちゃっています…。

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