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活字に帰る

妊娠前半期には、ずっと遠ざかっていた活字。6ヵ月を過ぎたころから、何だか文章を読みたくなり、運動がてら図書館に通うことにしました。やっぱり図書館て楽しいですよね。あれもこれも読みたくなるけれど、普段より少なめに借りることにしました。本を読む速度が落ちているのです。

選ぶ本も変わってきました。重たい本、というとちょっと抽象的だけれど、深刻な問題を提起している本や、少し複雑な文学的要素の強い本、けっこう凄惨なシーンのある本たち、今まで決して嫌いではなかった、というか、好きでした。でも今の私には、あまりにも真に迫ってきてしんどかったり、頭の芯がどんよりして心が疲れちゃったりして、読みたい気持ちになりません。

できるだけ、ここではないどこかに連れ去ってくれる本が読みたい。

狐笛のかなた (新潮文庫) 狐笛のかなた (新潮文庫)

著者:上橋 菜穂子
販売元:新潮社
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影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫) 影の棲む城〈上〉 (創元推理文庫)

著者:ロイス・マクマスター ビジョルド
販売元:東京創元社
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 影の棲む城〈下〉 (創元推理文庫)

どちらの作品も、ファンタジー。『狐笛』のほうは少女が主人公で、『影の棲む城』は40歳の女性が主人公。年齢差はあるものの、ある日突然、自分ではどうすることもできない運命に翻弄され、いったんはそれを拒み、受け入れることを決め、自身の使命を果たすべく悪と戦い、恋愛や友情を通してひとまわり成長するという、ファンタジーの王道的ストーリーは同じ。けれど、いつのときも"指輪物語"から"ハリー・ポッター"まで、このストーリーは人の心を打つものなんですよね。

どちらの作品も「魔」にとりこまれる人間たちが出てきます。そしてその「魔」を取り除くべく闘うのが主人公です。ファンタジーですから、現実とかけ離れた架空の世界が舞台ではあるけれど、「魔」に取り付かれた人たちの、心が荒んでいかざるを得ない事情や要因を知ると、現実の世界にも「魔」にとりつかれて自分を失っている人はたくさんいるのではないか、と思わされます。そして彼らがただの駄目な奴でも弱い人間でもないことも痛感します。

『狐笛』のほうは、ラストが印象的。悲しく美しい、日本人の愛する物語だと思います。『影の~』のほうは、夫に先立たれ、娘は嫁いでしまったという40歳の女性が主人公ということで大人のための物語。架空の物語とはいえ、彼女の考察や感情の内容はとってもリアルだと感じました。ファンタジーはまずはその世界にすんなり入れるかどうかで、好き嫌いが決まってしまうところがありますが、どちらの作品も複雑な架空の地図などを理解しなくても、楽しめる作品だったと思います。

双頭の悪魔 (創元推理文庫) 双頭の悪魔 (創元推理文庫)

著者:有栖川 有栖
販売元:東京創元社
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私はあまのじゃくなところがあります。本の売れ筋ランキングや○○ベストテン、何とか賞受賞作品とか、本屋に大々的に平積みしてあるものとか、気になってチェックするくせに今は読んであげないのよー、などと心の中で強がりを言い、しばらく放っておいて、それでも読みたいと思えば手に取ることが多いです。

だからどうしても「何をいまさら」感たっぷりの本のセレクションになってしまいます。この作品もミステリー好きの方なら、いやそうでなくても、もうとっくに読了された方が多いのではないかと思います。

大学生の有栖川有栖たちが、同じ推理研究会の有馬麻里亜(ありままりあ)を救出するために、四国の人里離れた芸術家の村に訪れて、殺人事件に巻き込まれるという話です。

何だか登場人物の名前や、事件の起こる舞台が、現実から離れた感じがしたので、これなら楽しめるかもと思って手にとりました。確かに面白くて夢中になって読んだのですが、読んだあと重たい石が胸を押しつぶしているような気持ちになってしまいました。それだけこの作品が優れているということになるのでしょうが、陰鬱な雰囲気とか人の悪意だとか、殺人現場のシーンなどがどうにも頭から消えません。日本の現代もののミステリーはしばらく止めたほうがいいかなあと思いました。

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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なぜ『双頭の悪魔』と同じ連続殺人事件が起きるのに、こちらを読むとむしろホッとするのでしょうか。翻訳物ということで、すでに舞台が日本ではないうえ、時代もずれているのが大きいと思います。それから、ミス・マープルの魅力! 私が帰ってくる場所にいつまでも居てくれる気がします。肩の力をぬいて、お茶を飲みながらミス・マープルの活躍を楽しみました。

そういうわけで、これからも本の力を借りて、色んな場所に連れて行ってもらい、心を癒してもらったり、潤ってもらったりしたいと思いますnotes

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また帰ってきました!

妊娠が分かったとたん、私という人間が大きく変わってしまった気がした。

食べ物の好みが変わる。好きだったお酒もコーヒーも飲みたくなくなったし、好物のお肉も、納豆も、卵も、どうしても食べたいと思えなかった。果物や野菜ばかり欲しくなって、まるで違う人間になったみたいだった。

大好きな読書が出来なくなった。英語はもちろんのこと、日本語も読み続けられない。読みたいとも思わない。いざ読んでみても、集中力が続かなくて、頭をおいてけぼりにして目だけが活字の上を流れてゆくのだ。

考えてみれば、今まで「私」だと思っていた人間は本当に「私」だったのだろうか。もしかしたら、まだ埋もれている「私」がたくさんいるのかもしれない。本嫌いの私、菜食主義の私…。今までと180度、別人の自分。好きなものが好きじゃなくなるというのは、本当に不思議な経験だった。

妊婦生活前半は、少しの間入院もしなければならず、なかなかしんどい毎日だった。退院したあとも家で安静にするように言い渡され、私は最低限の家事もできずに、ただぼーっと身を横たえて過ごしていた。

逆さに見上げた、窓の向こうに澄んだ青空が広がっていて、本を読むことも、テレビを見ることも、音楽を聴くこともせず、私は日がな一日ぼんやりと空を見つめていた。

あのとき私は、卵をじっと温め続ける親鳥のように、小さな命を生かすためにそこに在る動物となったように思う。ただそのためだけに毎日を過ごす私は、けれど、不思議なことにそれまでの生活より、いっそう、

生きている

ことをひしひしと感じていた。毎日を考え、感じて、何より行動することこそが、人生の輝きであると考えがちだけれど、「生」の輝きというものは何と奥深いものだろう。そしてこの小さな命は、生まれ出る前からもうすでに、私を変化させ、磨き、生きることの深みを教えてくれている。

世の中は良いことばかりでもないし、うまくいかないことも多いし、思うほど楽しさであふれているわけではないけれど、あのとき横になってみた窓の向こうの空の青さには、何だかこの世界の人たちの、純粋で澄んだ祈りが集まっているような気がした。

appleさて、現在妊娠7ヶ月、安定期に入りました。いまは体重の増えすぎが心配なほど、体調も良好ですshineようやく、色々なことをしたいと思う気力がわいてきて、ブログにまた帰ってくることにしました! また活字に触れたいと思うようになり、文章を書きたいと思えるようになりました。今回の文章は、妊娠の初期の様子を私なりに残しておきたいなあと思ってまとめたものです。

次回からは、またぽつぽつ本の紹介を書いていきたいなあと思っていますflair

改めて、ソファの上にいながらにして、ここではないどこかに一瞬で連れて行ってくれる「本」ってすごいなあ、良いなあと感じています。でも英語を読むには、もう少しリハビリが必要かも。久しぶりに読むと、やっぱり続かないです…。

ブログを通して、また皆さんとお会いできることが本当に嬉しいです!またまた今後ともよろしくお願いいたしますconfident

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