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A Lesson Before Dying

A Lesson Before Dying (Vintage Contemporaries) Book A Lesson Before Dying (Vintage Contemporaries)

著者:Ernest J. Gaines
販売元:Vintage Books
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ページ数: 256ページ

1940年代後半のアメリカ南部の町で、一人の若者に死刑が宣告された。若者の名はJefferson。結果は目に見えていた。仲間の二人の黒人が死に、ましてや酒屋の店主である白人が死んだのだ。一人無事でいた、黒人に罰が下らないわけはない。全員が白人で揃えられた陪審員は、Jeffersonが無実を主張しているにもかかわらず、死刑を宣告した。

傍聴席にいた、育ての親であるMiss Emmaもまた、結果は始めから分かっていた。しかし、彼女はどうしても許せない一言を耳にする。「hog(豚)」。Jeffersonの弁護人は、彼が善悪の判断もつかない馬鹿なhogなので、無罪にしてやってくれ、と主張したのだった。Miss Emmaは、「私」のおばとともに、教師である「私」にこう頼みにやって来る。

あの子に、豚ではなく人間として死ぬということを教えてやってくれないか。Jeffersonが人間であることを、裁いた白人たちに証明してやってくれないか…。

「私」はそんなことやりたくなかった。だいたい教師という職業が嫌いだった。しかし、二人の強い意思に負け、いやいやながらもJeffersonを定期的に訪問することになった…。

―― 黒人差別が色濃くのこる時代の南部を舞台に、人間らしく生きることの意味、美しさをうたいあげた物語。

作家について

Ernesti J. Gainesは1933年、アメリカ南部、ルイジアナ州のプランテーションで生まれる。彼はプランテーションで働く一家の五代目であり、9歳から綿花摘みの仕事をしていた。プランテーションで働く黒人のための学校は、年間6ヶ月のみだったという。彼の作品は全て、この町がモデルになっている。その後、両親のいるカリフォルニアへ移り、スタンフォード大学の奨学金給費生として学んだ。本作品は、National Book Critics Circle Awardを受賞している。

感想

黒人差別の残る時代の南部の町、黒人では珍しく大学の教育を受け、現在は教師をしている「私」が語り手となって物語は進んでいきます。今いる町、今の職業、そしておそらく自分が黒人であることからも、逃げ出したくて仕方がない「私」。しかし、おばから死刑囚Jeffersonに豚ではなく人間として死んでゆくように教えてくれ、と頼まれます。

「私」は恋人である同僚のVivianにこう吐き出します。

What do I say to him? Do I know what a man is? Do I know a man is supposed to die? I'm still trying to find out how a man should live. Am I supposed to tell someone how to die who has never lived?

けれど物語が進むにつれて、Jeffersonとともに「私」もまた、人間として生きる美しい姿を私たちに示してくれます。

最近「エモーショナル」という言葉がキーワードになっていると聞きました。確かに、本を含めて映画やドラマ、さまざまな宣伝文句に「感動」やら「泣ける」やら「涙」という単語が目につくような気がします。

「泣ける」というドラマを終わりのほう20分だけ見て、完全に泣いてしまう私が言うのも何ですが、

泣けりゃあいいってもんじゃないぞ!!

と叫びたいのです。

例えば、失恋や片思い、別れ別れになった恋人、友情と恋愛、

それも「泣ける」かもしれない、そういう切ないのもいいけれど、

本当に私たちを大きくゆり動かすものは、その向こうにあるのだと思うのです。

何のために人は生きるのだろうとか、

死ぬってどういうことだろうとか、

どうして死ぬのが怖いのだろうとか、

それならどうやって生きればいいのだろうかとか、

真剣に口に出しても、なに難しいこと言ってんのと、笑われる時代になってしまいました。

逃げ出すことを、楽しいと呼び

見えを張ることを、プライドと呼び、

考えずに、他人を誉め

同じくらい考えずに、他人を批判する時代になってしまいました。

幸せとは何かと言われても、有名になることか、お金持ちになることか、そういう人と結婚することくらしか思いつかず、

周りから浮くのが怖くて言葉を合わせ、ただの顔見知りを友達と呼ぶ時代になってしまいました。

この本の作者Ernesti J. Gainesさんは、ただひたすらまっすぐに、真面目で難しいし笑われてしまうかもしれないことを、一生懸命みなに伝わるように、美しい物語をつくって、呼びかけてくれています。

こんなとき、私は本当に本を読んできて良かったなあと思うのです。世界のなかには確かに、本気で私たちに大きな大きな何かを伝えようと必死になってくれている人たちがいるのだと勇気づけられるのです。

小さくて、静かで、もしかしたら大半の人が気がつかないかもしれない光を、誰かがすくいとって、そしてまた誰かが見つけて…。本はそんな力を持っています。

表紙に載っている"chicago Tribune"の賛辞の言葉を紹介したいと思います。

"This majestic, moving novel is an instant classic, a book that will be read, discussed and taught beyond the rest of our lives."

大変読みやすい易しい英語で書かれています。翻訳本もあるようですが、入手が難しそう。図書館でどうぞ。一人でも多くの方に手にとっていただきたい名作。

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