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Unless

「Unless―― もし~でなかったら…」 人生でそんな風に思うことありませんでしたか。

Unless (Fourth Estate) Book Unless (Fourth Estate)

著者:Carol Shields
販売元:Fourth Estate
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ページ数: 320ページ

地元の図書館では皆、私が誰かを知っている。誰もじろじろ見たりはしないけれど。私の名前が「Rita Winters」で、夫は医者で、トロントに近いオンタリオ州のこの町で、古くて大きな一軒家に住み、三人の娘がいて、作家であり翻訳者であることを、皆が知っている。

そして、一番上の娘「Norah」がかわいそうな状況にあること、―― 19歳の聡明で美しい彼女が、一緒に住んでいる恋人と別れ、突然大学を退学し、行方が分からなくなったと思ったら、トロントの街角であぐらをかいて座り、「Goodness(善)」と書いたボール紙をぶらさげ、コインをもらうための器を前に置き、物乞いをはじめたこと ―― を誰もが知っている。

私の日常はそれでも動いてゆく。翻訳をし、二番目の小説に着手し、友人と喫茶店でおしゃべりをし、夫と他の二人の娘との生活は続いてゆく。文句のつけどころのない、充実した幸せな生活。しかし、Norahのことが頭から離れることはない。

―― なぜ、娘は急にあんな物乞いみたいなことをはじめたのか。「Goodness」って一体どういう意味なのだろう。44歳の母であり作家であり、女であるRitaが「Goodness」とは何か、人生とは何かを探し求める物語。

作家について

1935-2003 アメリカ、イリノイ州で生まれる。1957年結婚後、カナダに移住。詩や短編を本格的に書きはじめる。1975年Ottawa大学の英文学MAを取得。娘四人と息子一人を育てる。1993年に出版された「The Stone Diaries」でピューリッツアー賞を受賞した。(詳しくはこちら

感想

この本は面白かったのですが、それを書き表すのが難しくて、さっきから書いたり消したりしています。だいたい、あらすじもあってないようなものなのです。

ある章では、友人と喫茶店に行っておしゃべりします。ある章では、Ritaが書き始めた小説の登場人物が出てきます。ある章では、奥さんに出て行かれた古くからの友人が、ある章では…。

いえいえ、面白いのはそんなところではないのです。

全編を通して、Ritaが何をしていても、どんなことを考えていても、その奥底には「Norah」がいます。「Goodness」という言葉が横たわっています。そして、悲しいことに物語が進んでも母親とNorahとの距離が縮まっていく気配はありません。

印象的なシーンの一つに、Ritaが仲間と行ったレストランのトイレで落書きをするというシーンがあります。

"My heart is broken."

作家であり翻訳家である彼女が、この言葉をトイレで人知れず、落書きします。そしてはじめて自分がとても解放された気持ちになります。このちょっと笑っちゃうところまでいく、やりきれなさ。Ritaが負っている傷の深さを示された気がしました。

そう、この小説は、RitaもNorahも傷ついているのに、それが笑っちゃうくらいからっと書かれています。

Norahが最後に家で、Ritaである私と交わした会話。

"Try to explain." I said.

"I can't love anyone enough."

"Why not?"

"I love the world more." She was sobbing now.

"What do you mean, the world?"

"All of it. Existence."

"You mean," I said , knowing this would be sound stupid,

"like mountains and oceans and trees and things?"

「私は完全にどうしたらいいか分からないんだわ。寂しいんだわ。傷ついているんだわ」という自覚をもって、自分自身を眺めている妙な冷静さが、変におかしくて、それがやりきれなくて胸を打ちます。

自然に流れていくように思われる章だてですが、トイレの落書きのシーンのように、個別の出来事が、やがて心に一つ一つ石を積み上げてゆくようにだんだんと重たくなり、じわじわと効いてきます。ただ、それがもしかしたら、あらかじめ用意されているというような印象、もっと言えば少しわざとらしいという印象を持つ方がいるかもしれません。

終わりのほうで、Norahの心の傷が明かされるところ(ここは私は好きです)を含めて、でもやっぱりどのシーンもこの物語に必要なのだなあ、と私は思いました。こういうときは、私は喜んで作者のわなに自分からひっかかっていきたいと思います!

事態は一見どんどん悪くなっていくようで、けれどほんとのほんとは、良いほうに向かっていくプロセスの一つでしかないこと、人生ではいっぱいあるのかもしれませんね。(*^-^*)

そういうわけでピューリッツアー賞を受賞したという「ストーン・ダイアリー」もいつか読むだろうなあと感じています。翻訳書が出ているようですね。うん、そっちを読もうかなあ。

"A life is full of isolated events, but these events, if they are to form a coherent narrative, require odd pieces of language to cement them together, little chips of grammar (mostly adverbs or prepositions) that are hard to define, since they are abstractions of location or relative position, words like therefore, else, other, thereof, ... .... "

ところで(。・o・。)ノ

このブログの洋書のジャンル、気がついたらものすごーくおおざっぱですよね…。本当に怖いくらい雑な区分けで申し訳ないのですが、ミステリ(ー)以外の大人向けの本は「文学」に入ってしまっているとお考えください。あと「YA(10代向け)」って、9歳からの本も入ってるんですけどーなんてどうか言わないでくださいね。大人向けじゃない向けの本が入っているとお考えください。Σ( ̄ロ ̄lll) ひどい、ひどすぎる。流行りの(もう終わったかも)「片付けられない女」みたいだわ。

あんまりジャンルを気にして読んでいないのです。(言い訳)面白そう!と思った本を読んでいるだけなのです。(更に言い訳)あー、もう「洋書」ってことで、ひとまとめにしちゃおうかなあ。(開き直り)

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コメント

ご無沙汰しております~。久々に平日に休みを取り、今日は日本は秋晴れ。湿度30%と爽やかな気候に洗濯機がガンガン回っています。
紹介されている本の表紙は書店で見たことがあります。わりとジャケ買いならぬ表紙買いしてしまう私なので、気になりました。
でもあらすじを読むと私には読めそうにありません~(・_・;)
本の感想を書くのは本当に大変な作業ですよね。私も1つの記事を書くのに何日もかかることは良くあって、消しては書きを繰り返すと何時間もかかっていて余計にわかりづらい文章になったりします。
伝えたいけど、伝えれないジレンマに自分の国語力の乏しさにと凹むことばかりです。
nikoさんの記事はとてもわかりやすくて面白く拝見していますよ~!!

雫さん
湿度30%の秋晴れ!そういう日は洗濯物がよく乾くんですよねー。こちらだと外に洗濯物を干す習慣がないので、あのお日さまの光で乾いたぱりっとした手触りを懐かしく思います。私も洋書のジャケ買い、たまにしちゃいます。特に候補作品のなかで迷ったとき、最後は表紙で決めちゃったりしますよ。たまにすんごい色合いの表紙のもありますよね!
この「Unless」の感想を書くのは難しかったです…。とらえどころがなくて、でも良い本だと思ったので、どうやったら面白さが伝わるか悩みながら書きました。確かに書けば書くほど、余計に分かりづらい文章になることありますよね…。私は雫さんの記事を初めて読んだとき、登場人物のかわいらしさとおかしさに、くすっと笑ってしまって、それでコメントしたのを覚えているのですが、そういう風に本を紹介できたらなあっていつも思っています(が、なかなか難しいです…)(^∀^)ゞ 。

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