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Water for Elephants

去年の話題作のうちの一冊に挑戦!(*゚▽゚*) 「BookSense.com」で、Book of the Year に選ばれました。

Water for Elephants Book Water for Elephants

著者:Sara Gruen
販売元:Algonquin Books
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 331ページ

作品区分: 文学

―― 私は90歳である。もしくは93歳。そのどちらかだ。移動は車椅子。施設での生活。ときどき、子供や孫たちが会いにくる。ある日、近くにサーカス団がやって来た。入所したての新入りが言う。「昔、象に水をやったものだよ」 あんたは嘘つきだ! 象がどれくらい水を飲むか知っているのか? 

七年近くサーカスで働いていたことを、私はあまり人に話さない。口がすべりそうで怖いからだ。七十年間、私はあの「秘密」を誰にも話さず自分の心にしまいつづけてきた。

―― 23歳の私「Jacob Jankowski」は、名門大学に通い、父親にならい獣医学を学ぶ幸せな青年だった。しかし、とつぜん状況は一変する。両親が事故で死亡。そして借金をしていたことが判明する。無一文の孤児となった私はある夜、汽車に飛び乗った。それは「Uncle Al」率いるサーカス団の列車だった。獣医学を学んでいた私は、サーカス団の動物の獣医として働くこととなり、動物と曲芸をする美しい女性「Marlena」と出会う。動物たちを管理する責任者の「August」は彼女の夫。気性が激しく、ころころ態度の変わるAugustに私はだんだん嫌悪をつのらせていく。

ある日、サーカス団に象「Rosie」がやってきた。Rosieは人の指示が理解できず、曲芸ができず、サーカス団にいた経験もない売れ残りの象だという。でもRosieは、本当に人の気持ちが理解できない象なのだろうか…。

―― サーカス団で待っていた私の人生とは? 誰にも話していない「秘密」とは?

作家について

Sara Gruenはカナダで生まれる。現在アメリカ、イリノイ州に在住。本作品が三作目の長編小説。

作家のHPはこちら

感想

この作品の魅力は、何といってもまず舞台が「サーカス」だということ。列車で国内をまわるサーカス団、目的地につき大きなテントを設営する様子、呼び込みの大きな声、それを聞いて集まる人々の熱気や興奮、サーカスに出る檻のなかの動物たちのにおい、読んでいるうちに目の前に世界が立ち上がってきます。さらにサーカスですから、登場人物たちがミステリアスで個性的でないわけがありません。けれどあまりにも現実離れした人間をえがかずに、そこに普通の人々が持つ生活、悩みがうまく取り入れられているように思いました。

それから物語の展開がはやくて、ドラマティックだということ。「90歳余りの現在の私」と「若き日のサーカス団での私」が入れかわり立ちかわりあらわれます。「私」の老人施設での周りの人とのやりとりも、サーカス団で身にふりかかる出来事も、どちらも流れがはやく、アップダウンも効果的につくられていて、波にのるとページをめくる手が止まらなくなってしまいます。人の気持ちや心がじっくり書かれた小説も好きなのですが、こういうぐんぐんストーリーに乗れてしまうような小説もやっぱり良いですね!

名門大学の学生が、両親を失くし、無一文になり、学校に通えなくなり、サーカス団で暮らしをたて、しかも「世界大恐慌」が起こった時代で生活は楽ではなく、90歳余りになった今、施設で生活しています。車椅子で移動し、子供や孫たちが定期的に会いにきますが、家族の一員になれていない寂しさを感じています。今の世の中の価値観では、もしかしたら主人公を「不幸せ」だと考える人が多いかもしれません。けれど私はこの本を読んで、彼のことをどうしても「不幸」だと思えませんでした。この作品では、出てくるものたちが皆、思うぞんぶん怒ったり、嫉妬したり、ねたんだり、欲にふりまわされたり、泣いたり、笑ったり、喜んだり、愛したりしています。

「幸せ」って一体どんなことをいうのだろう。

そんな問いかけを感じる作品でした。

I don't talk much about those days. Never did. I don't know why-- I worked on circuses for nearly seven years, and if that isn't fodder for conversation, I don't know what is.

Actually I do know why: I never trusted myself. I was afraid I'd let it slip.

この作品は「BookSense.com」でBook of the Yearに選ばれています。「amazon」をはじめとするネット書店や大型チェーン店が圧倒的な勢力を誇っているなか、それに負けじと独立系の本屋さんが手を組んで運営しているサイトが「BookSense.com」です。売れ筋の本ばかりでなく、ユニークな作品もピックアップされていて、私はいつも見るのを楽しみにしています。最初のページの「本を読む人」が、おばあちゃんになったり、女の子になったり…。見るたびに変わって、かわいいんですよ!

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コメント

さくら
あなたは本気ですか・は良い意味での衝撃をうけなにかコメントと思っても書けませんでした。
今日も大切なことを考える機会をそしてヒントを有難うございました。
いつか読めたらいいなと思って居ます。

この本、私も気になっていました。
amazon.comで昨年のエディターが選ぶベスト17位だっのでそのうちに読みたいと思っていました。
nikoさんのレビューを読んで益々読みたくなってきました。
The Book Thiefも読みたいのですが、ペーパーバック版が無いので、出るまで待っています。
といろいろ読みたい本があり、いつになるかは不明ですが、きっと読みます。
いつもステキな本を紹介して下さるnikoさんに感謝!

さくらさん
コメントありがとうございます。「本気ですか」はmichiさんの素晴らしい記事に感動して書いたものです。私も普段、地球で起きている色々な問題にちゃんと関心を持ったりしてこなかったので、考える機会を与えてくださってmichiさんに感謝をしています。でも普段の自分の無関心さを痛感しました(涙)。
この本はストーリーの展開がはやくて、どんどん先を読みたくなりました(*^^*)。さくらさんもいつか手にとってくださると嬉しいです。

リウマチばあちゃんさん
コメントありがとうございます。この本は「amazon」でも取り上げられていたんですね! 私も色々どんどん読みたい本が出てきて困っています。嬉しい悩みではありますが…。いつかこの本のリウマチばあちゃんさんの感想を知りたいなあ、と思います。
いつもリウマチばあちゃんさんの洋書の感想を読まさせていただくのをすごく楽しみにしています!ありがとうございます(*^^*)。

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