« 「深読み」への道(その一) | トップページ | ジャマイカ »

The Book Thief

本のタイトルを見ただけで、何だかわくわくしませんか?そして内容も、その期待を裏切らない素晴らしいものでしたヽ(^◇^*)/ 

The Book Thief Book The Book Thief

著者:Markus Zusak
販売元:Alfred a Knopf
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ページ数: 552ページ

作品区分: YA

ドイツのナチス政権下の時代、9歳のLieselは、ミュンヘンの夫婦にひきとられた。養父のHansは、Liselが盗んで持ってきた本を見つけても彼女を叱らず、夜中に本の読み方を教えてくれる。アコーディオンも上手で時々聞かせてくれるこのPapaのことがLiselは大好きになる。

第二次世界大戦がはじまり、暮らしはますます苦しくなるが、Lieselは友達と通りでサッカーをして遊んだり、Papaと一緒に本を読んだりして幸せだった。ある日、市長の奥さんの書斎に入れてもらったLieselは、本で埋め尽くされている部屋に茫然とする。そして、どうしても本を自分のものにしたくなり、彼女は本を盗んでしまう。

一方、Hansは、国民の多くが支持をしているナチスに賛同できずにいた。第一次世界大戦のときに、命を助けてくれた軍隊の仲間が、ユダヤ人だったからだ。ユダヤ人への弾圧が厳しくなるなか、命の恩人である彼の息子が助けを求めてやってきた。Hansは、その青年Maxを自宅の地下室にかくまうことを決める。

Maxが病気で寝たきりになったとき、Liselは傍らでずっと本を朗読してあげた。そのお礼にMaxは手元にあるたった一冊の本「わが闘争」のページをやぶり、短い物語を書いてLiselに贈る。

MaxとLiselの一家の絆は深まるが、ユダヤ人の弾圧は激しくなり、戦況は悪化していく。空襲から避難するために、街の人々はシェルターに集まった。動揺する人々の中でLiselは持参してきた本を声に出して読み始める。Liselが発する物語を聴きながら、人々は攻撃の恐怖をやりすごす。Liselたちは自宅に戻ると、Maxが無事なことを確認し、ほっとする。しかしある日、捕虜となったユダヤ人たちを収容所まで歩かせて人々に見せる「パレード」を目撃したLiselたちは、Maxをかくまい続けることが難しいことを悟る。

―― ナチス政権下の過酷な時代を生きる少女と、本と、言葉の感動の物語。

作家について

Markus Zusakは、1975年オーストラリアに生まれる。本作品は、両親から聞いたドイツのナチス時代の話がきっかけとなって生まれた。前作「I am the Messenger」では、オーストラリア児童図書賞を受賞している。現在オーストラリア、シドニー在住。(作家のHPはこちら

感想

ドイツのナチス政権下、1940年前後の厳しい時代を舞台にした物語であり、その悲惨さに胸が痛くなります。しかしその背景をベースに、作者が本当に伝えたかったことは別にあると感じました。

Liselが市長の奥さんの書斎で、あらゆる本に触れて、あらゆる本を感じる場面。

MaxがLiselのために書いた、短いけれど清らかな宝石のような物語。

そしてそのMaxを支えていた一冊の本「我が闘争」(アドルフ・ヒトラーが書いたものです)。

シェルターの中でおびえている人々にLiselが本を読み聞かせる場面。

MaxがLiselに贈った、まっすぐで優しさに満ちたもう一つのお話「The Word Shaker」。

作者の「言葉」「本」に関する強いメッセージを、読者はいたるところで受け取ることになります。

さらにもう一点、鍵となるのが語り手の存在です。主な登場人物であるLiselでもMaxでもありません。作者は語り手に「death」を登場させています。この語り手が作品をありきたりなものにせず、奥行きのある素晴らしいものにしていると私は感じました。

そして、決して読者を中だるみをさせることなく、最後まで作品の世界から逃さないのは、ストーリー展開そのものだけでなく、文章の魅力によるところも大きいと私は思います。YA作品に限定するのはもったいないくらい、上質で力のある文章だと感じました。

最後に。

この本は私に「日本」を思わせました。そして、「アメリカ」を、いま現在戦いをしているさまざまな土地の名を、思わせました。この作品は第二次世界大戦前後のドイツを舞台にしていますが、けれど私が生きている今現在の世界のどこの場所が舞台であってもおかしくない、と思わせました。

一体、これから私たちはどこへ行くのだろうか? と頭を抱えたくなるニュースであふれかえっていますが、1975年生まれの作家がこのような作品を書くことに、もしかしたら素晴らしい未来が待っているのではないかと、少し目線があがった気がしました。生きた年数で言えば、わずかに先輩であるはずの私ですが、この本にはとても励まされました。私としては、最近のベスト本。今後も注目していきたい作家となりました。

印象に残った文章を引用します。

I have hated the words and

I have loved them,

and I hope I have made them right.

にほんブログ村 本ブログ 洋書へにほんブログ村 本ブログへ (ブログランキングに参加しています。良かったらクリックしてくださいね(*^^*))

« 「深読み」への道(その一) | トップページ | ジャマイカ »

コメント

あっ、これは読んでみたいな、と思いAmazon UKをのぞきました。(私は今イギリスに住んでます)。そうしたら、2006年3月に出たnikoさんのブログに紹介されているバージョンは在庫がなかったので、来年1月1日発売予定の新刊を予約しました。 それにしても、その新刊、女の子と骸骨がダンスしている表紙です。日本のAmazonにもこの新刊がリストに載っているけれど表紙次第でずいぶん本の印象が違うなぁ、と思いました。好き嫌いは別としても、はっと目を引きますよね。うーん、出版業界もいろいろ工夫しているのですね。この本はアメリカでベストセラーだったのですか? 

nikoさん、こんばんは(*´∇`*)
この本はAmazon.comでお勧めされていて、とても気に
なってカートに入れてましたが、そのままでした。
なのでnikoさんの記事は大助かりです!
昨日"The Kite Runner"という本を読んで今日も余韻が
続き色々なことを考えていました。あまりにも印象が
大きくて次に読む本がまだ決まっていません。
私も読んでみたいです。

ぱくちさん
こんにちは。早速、amazon UKで表紙の絵をチェックしてみました!なるほど、確かにずいぶんと感じが違いますね~(*^-^*)でも嫌いじゃないかも…。この本は、私がチェックしているいくつかのアメリカのサイトでお勧め本として載っていたので購入を決めました。amazon.comの評価も結構良いほうだと思うのですが、Top100に入るほどではなさそうですね。素晴らしい本なのになあ。

雫さん
こんにちは。雫さんもこの本はチェックされていたんですね~!(*^^*)私も雫さんの「The Kite Runner」読了後と同じ状態です。しばらくは、この本の余韻に浸りたい気分です。そして、いまだに記事にこう書けばよかった、ああ書けばよかったと思ったりしてしまいます。好きな本ほど、感動を伝えるのが難しいです。

nikoさん
わ!また読みたい本が!!

こんなに素晴らしい本がいっぱいあるなんて!それを今になって気づくなんて!!
無駄使いした時間が本当に惜しい・・です。

さくらさん
この本に興味を持っていただいてありがとうございます!この本の作者はオーストラリアに住んでいるようです。世界には素晴らしい作家が、まだまだたくさんいるんだろうなあ。一冊でも多く出会いたいものですね。(*^^*)

nikoさんの紹介してくださる本、興味深いものが多くて、ますます読みたい本が増えて困ってしまいます(笑)。nikoさんは、どんなアンテナをはって、本を選んでいらっしゃるのかなーと、思いました。この本も、「面白そうだなー」と思っていたら、偶然、英語で書かれた批評を読んで、ますます興味が・・・でも、私の利用している図書館にはまだ入っていないようで、残念ですが・・・

アラッ、これ感動的な本ですね。
nikoさんの書評を読んでいると、本の内容がよく分かり読んでみたいなぁ、と思います。
オーストリアの作家ですか。オーストリアの作家の本はまだ読んだ事がありません。

素敵な本を教えてくれてありがとう♪

michiさん
こんにちは。いつも興味を持っていただけて、すごく嬉しいです!ありがとうございます。本選びのことですが、michiさんが記事に書いていらっしゃったように、本の数が多くて、ネットや新聞、雑誌などをもとに慎重に選んでいるつもりでも、けっこう今の自分に合わない本を手にしてしまったりしています。そういうときのあきらめは結構早いほうで、さっさと本を閉じることにしています。何冊かそういう本が棚で眠っています…

リウマチばあちゃんさん
こんにちは。この本は構成もすばらしくて、息切れすることなく後半に向けてどんどん感動が高まっていきます。こういう本に出会えて、幸運だったなあと思います。

>素敵な本を教えてくれてありがとう♪

私のほうこそ、いつも素晴らしい映画や本の存在を教えてくださって、ありがとうございます!(*゚▽゚*)

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/166513/4491609

この記事へのトラックバック一覧です: The Book Thief:

» The Book Thief [Drop's Happy Reading Day]
ISBN:0375831002 YL7.0〜7.5 127,160words(概算) 画像左:ハードカバー 二の腕シェイプアップに最適。 画像右:PB 良い子の皆さんはこちらにしましょう。 家族を失ったLiesel Memingerはミュンヘン郊外の夫... [続きを読む]

« 「深読み」への道(その一) | トップページ | ジャマイカ »