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Lucas

Lucas Book Lucas

著者:Kevin Brooks
販売元:Chicken House Ltd
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作品区分: YA

ページ数: 359ページ

Cait(16歳の女の子)は、最近変わり始めた昔馴染みの友達Grayのつきあいで、パーティーに出かける。Jamieをはじめとする男の子たちはお酒とたばこに溺れている。Grayは楽しそうにしてるけれど、Caitは、彼らの下卑た笑いと汚いジョークで埋め尽くされた会話に、心から楽しめない自分を発見する。泥酔した彼らは、夜の街で見かけた少年に石をぶつけて遊びはじめる。

その少年がLucasだった。青い瞳に美しい顔立ちをしたLucasは、干潟にある小屋に一人で住んでいた。両親もいないし、出生地も年齢も分からないという。住まいを転々としながら、日々のお金を稼いでいた。「悪いことを避けるのは簡単じゃない。自分が一番良いと思うようにやっていくしかない」正直で、強いLucasにCaitは強く魅かれる。

町で行われるボート競技の日、事件は起こった。一人の女の子が溺れている。競技を見物している人たちは誰も助けようとせず、まるでショーの一部か何かのように傍観している。そこに一人の少年が飛び込んで女の子を助け出した。Lucasだった。しかし、女の子の母親はこう叫んだ。「汚らしい! うちの子に触らないでちょうだい!」母親の誤解に輪をかけて、Lucasを面白く思わなかったJamieたちも嘘をつく。「あいつが女の子を溺れさせたんだ」 Caitは、その嘘に流されるかのように一部始終を見ていたはずの大勢の人たちが、Lucasを疑いの目で見始めるのを信じられない思いで見ていた。

さらにLucasの立場を悪くする事件が起きた。女の子が、体中ナイフで切られて、血まみれになって倒れているのが発見されたのだ。「あの浮浪者がやったにちがいない」 「あいつを逃がすな」 人々はLucasに違いないと決め付けあちらこちらを捜しはじめる。―― Lucasが本当にやったのだろうか? 彼じゃないとしたら真犯人は誰なのか?彼を無実だと信じているCaitはどうするのか...

作家について

作家Kevin Brooksは、作家になりたいと思っていましたが、食べていくためにさまざまな職につきました。火葬場で補助員をやったり、ロンドン動物園で飲み物を売ったり、公務員として働いたり...。彼のデビュー作「Martyn Pig」はカーネギー賞で最終候補に残り、成功を修めました。現在は、エセックスというイギリスで最も小さな町に住んでいます。

感想

特に前半は、16歳のCaitの心情が細やかに表現されていて、読みたいけれど読みたくないくらい、心にせまってきました。人の心を先回りして感じとり、その意に沿うように行動してしまう彼女が、昔の自分に少し似ていたからかもしれません。自動車事故で母親を失い、その死から立ち直れない父親と、その父親を受け入れられない兄DominicがCaitとともに、Lucasとの出会いによって変化していくさまは人間の強さと美しさを書いている部分といってよいと思います。

清らかで勇敢で正直なLucasを人々は嫌います。憎みさえします。Lucasみたいになることも難しいけれど、そういう清らかな人間を認め、受け入れていく人間になることも、とても難しいのだと思い知ります。人間の醜さ、特に群集の愚かさが後半に向けて、みっちりと描かれています。

おそらく現代の北アイルランドの小さな町が舞台であると思いますが、干潟の小屋に一人で住み、人々から浮浪者(あるいはジプシー)と蔑まれるLucasの立場を、日本に住む私たちがどれほど自分に引き寄せて感じとることができるかという点が気になります。が、低いハードルに過ぎないと思います。

後半はミステリーの要素も加わり、話の流れにスピードも出てきて、一気に読んでしまうこと間違いなし!エンターティメントの作品としても十分読み応えのある作品だと思います。

最後に一言。作者が住むエセックス。イギリスで一番小さな町、なんて何だか素敵(*^-^*)

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コメント

nikoさんご自身の本もとても読んでみたいと思っています。いつかぜひぜひ望みをかなえてください。

さくらさん
 こんにちは(*^-^*)本を読むたびに思うことは、文章を書くということは、読むこととは全然違うのだということです。十秒たらずで読み終えてしまう文章を、作者がどれだけ時間をかけて書いていることか、私には想像を絶する作業に思えてなりません。けれど、さくらさんのこの暖かいメッセージを忘れることなく、まずは本を読むことで自分を深めていきたいと思っています。ありがとうございました(*^^*)

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